装飾クロムめっき
装飾クロムめっきとは?
クロムはイオン化傾向の大きな金属(卑な金属)ですが、空気中の酸素で透明かつ緻密な酸化皮膜(厚さ約5nm)を瞬間的に形成する事により、銅より貴な電位を示す耐食性の優れた皮膜になります。
また、皮膜が硬く(高温での硬度低下が少ない)、耐摩耗性、耐熱性、離型性にも優れていおり、大気中で変色せず、塩酸以外の酸・アルカリに腐食されにくいため、銅-ニッケルめっきの最上層保護膜(厚さ0.1~0.5μm)として主に利用され、特有の深みのある金属光沢色を呈すことから、装飾めっきに多用されています。
しかし優れた物性を持つ反面、人体への影響・環境汚染の懸念がある6価クロムを多量に使用し、めっき材料(陽極)に鉛も使用する事から、製造工程内での有害規制物質の使用を避けるメーカーも少なくありません。
装飾クロムめっき皮膜自体は0価の金属クロムであるため原則として6価クロムは含有しませんが、6価クロムを含むめっき液のめっき表面上への残留・付着により6価クロム含有皮膜と判断されるケースもあります。
分野 |
目的 |
用途例 |
装飾分野 |
耐変色性・耐食性向上・美観光沢付与 |
自動車外装部品・水洗金具・照明器具等 |
その他 |
光反射性、熱反射性、耐薬品性等 |
めっき特性と適応素材(参考)
耐変色性 |
クロムめっき表面の緻密な酸化皮膜により大気中における変色はほとんどありません。 |
硬度 |
クロムめっき皮膜が薄膜(0.1~0.5μm)であるため、下地めっき(銅・ニッケル等)や素材の硬度に依存します。 |
耐食性 |
装飾クロムめっきの下地めっきとして無光沢/光沢ニッケルめっきを適宜被覆させ多層化・厚膜化を図る事により、耐食性能は向上します。下記表に下地ニッケルめっきと上層の装飾クロムめっきの組合せによる耐食性能の違いを参考データとして列記します。使用用途に応じた下地ニッケルめっきの選択を推奨いたします。
下地めっき |
上層めっき |
レイティングナンバー 注1 |
無光沢ニッケル(μm) |
光沢ニッケル(μm) |
装飾クロム(μm) |
16h |
32h |
48h |
― |
10 |
0.2 |
9.5 |
8 |
5 |
― |
20 |
0.2 |
10 |
8 |
5 |
6 |
4 |
0.2 |
10 |
10 |
9 |
12 |
8 |
0.2 |
10 |
10 |
10 |
〔「めっき技術ガイド」より引用〕※ 評価方法:キャス試験※ 注1.レイティングナンバー法とは、JIS-Z-2371で規格化された塩水噴霧試験・キャス試験等の腐食促進試験の判定評価に用いられ、腐食度合いを面積比率(腐食面積/試料有効面積)で算出する方法です。数字が小さくなるほど、腐食面積が多くなる事を意味します。(レイティングナンバー10=腐食面積率0%=腐食なし) |
対象素材 |
適切な下地めっきを行いますので、基本的に素材種への依存はありません。 |
めっき浴種と対応ライン
対応ライン |
浴種 |
処理可能最大寸法 |
最大荷重 |
備考 |
精密装飾ライン |
装飾クロム浴 |
400L×250W×500H |
10kg |
手作業によるきめ細かな作業。 |